2020年 12月コラム「若者支援 事例 Aさん(当時26歳 女性)」~後半~

ここからAさんは次のステップに向けて動き出します。大学で取得した「栄養士の資格を活かしたい!」という想いを実現させるために。
ただ私は、Aさんは栄養士としてはブランクがかなりあるので、いきなり現場で通用するかが不安でした。

そこで私が提案したのがWワーク。劇場をやめず、栄養士としても週2程度働いてみる。これで自信が付けば栄養士に完全シフトすればいい。

③ポイント3 「転職活動は仕事しながらが原則」

よく仕事を辞めてから転職活動を始める人がいますが、これはかなりリスキー。いつ内定が出るか分からないし、
決まらなければその間はブランクになってしまうから。

人事採用担当者はブランクにはかなりうるさいです。理由を突っ込まれる事もあるでしょう。原則は仕事をしながらの転職活動です!

さて、その後Aさんは保育園の栄養士として週2でアルバイト採用されます。ここからがAさんの地獄の日々。
劇場で週4、保育園で週2働く。シフトによっては7連勤のあと、1日おいてまた7連勤になってしまう事もありました。
本人もこの頃が一番キツかったと語ります。

④ポイント4 「自分に欠けているものを冷静に分析する」

さらにAさんは疲労困憊の中、栄養士としてのブランクを補うため、この間少ない休みを利用して大学に栄養士としての「学び直し」に行っています。
この頃のAさんは、仕事をする事により自分には何が出来て、何が出来ていないのかを冷静に判断する力が身に付いていました。
だから、不足している栄養士としての知識を自ら取りに行ったのだと思います。

⑤ポイント5  「人生においてこの手の踏ん張り時は誰でも必ず巡ってくる」

この頃のAさんはWワークと勉強でほとんど休みがなく、かなり疲れていたので心配しましたが、今思うとここが彼女の踏ん張り時だったのだと思います。

「今時の子」という言い方は適切ではないかもしれないが、若者たち、キツいことや嫌なこと、現実から目を逸らして逃げてきた子たちが本当に多いです。
変に頭がいいから、色々理由を付けて逃げ回る。でも根本解決はされてないから、また問題が形を変えて戻ってきてしまうんです。

⑥ポイント6 「若いうちだからできる無理」

当時のAさんの働き方、多分今のおじさんの私には無理。でも若い頃にはやはり14連勤、うち3日は宿直、なんて事もしていました。
若いうちだから出来る事がある。できる無理があると思います。

問題を後ろへ後ろへと送ってる人がいたら、一度考えて欲しいです。年齢を重ねると、本当に無理が利かなくなる。
だから、早いうちに壁を降り越えてしまった方がいい!

その後、Aさんは劇場の仕事を減らし少しずつ保育園での勤務日数を増やしていきました。
社保の加入についてなど、雇用条件に関する事もしっかり相談してくれたので私としても適切な対応が出来たと思います。

そして保育園での勤務開始から2年後、遂に正社員登用を勝ち取る事が出来ました。

⑦ポイント7 「今の世において正社員になることは非常に難しい」

昔は雇用といえば正社員とパートアルバイトバイトくらいしかありませんでした。しかし今はそれに加えて、契約社員、派遣、紹介予定派遣、
正社員型派遣、業務委託、業務請負、個人事業主などその雇用形態は様々。

実はこれ、企業の都合によるところが大きいです。正社員は給与も高く保証もしなければならない。
会社が赤字でも正社員は指名解雇ができない。

でも、契約社員や派遣ならばいつでも解雇する事ができる。コロナ禍で未曾有の不況がやってくる可能性が高い今の世に誰が好き好んで
正社員を増やそうと思うのか。企業にとって正社員雇用はリスクになるって事です。だから求職側も、簡単に正社員になれると思わない方がいい。

では、若者たちには何が出来るのか。
しっかりとした書類作成・面接練習を行う事は当たり前ですが、+αで今皆さんが頑張っている事を真剣にやってほしい。

それが皆さんの血となり肉となる。アルバイトであっても一つ一つの仕事をしっかりこなせば説得力が増します。
皆さんの頑張っている姿を必ず誰かが見ています。

そして、「遊び」も真剣にやってほしいですね。仲間と雑談したり遊びに行ったりしてほしい。
体力、チームワーク、コミュニケーション、感性など社会で生きるに必要な要素が全て入っているはず。
仕事も遊びも真剣にやらないと身につかないんです。

⑧ポイント8 「人を巻き込む」

Aさんに関しては、一生懸命もがいて努力しているから私だって協力したくなる。頑張っている人を応援したくなるのは人間心理。
協力を得る事は悪い事ではないです。沢山の人を巻き込んで、自分をあらゆる形で応援してくれるサポーターを増やす事はとても大事。
人は一人で生きているわけではないのだから。

以上です。

キャリアコンサルタントとして若者支援をするという事は、本当に責任重大だと思います。その子の人生を半分預かるような物ですから。
今回このコラムを書きながら、当時の自分のサポートを振り返り「まだまだ未熟だな」と思う部分もありました。
でも、その場その場で必死にやってきた結果でもあります。

Aさんには幸せになってほしいし、彼女の人生の一部に関われた事は私のキャリアにも大いにプラスになりました。
人との出会いは一期一会であると認識しつつ、今後も若者支援活動に邁進したいと思っております。

株式会社ツクリベニッセ
取締役社長  齊藤貴之

2020年12月1日

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