2020 8月コラム ドルヲタの就活

皆様、平素大変お世話になっております。
ツクリベニッセ社長 齊藤でございます。

今日は「本当にあった一風変わった就活のお話」と題しまして、お話しをさせて頂きたいと存じます。

私は本業の傍ら、とある大学のキャリアサポートセンターにてキャリアコンサルタントを務めさせて頂いています。

主な業務は学生さんの履歴書やエントリーシートの添削、面接対策など。

今年の3月頃だったでしょうか、男子学生A君が私のもとにやってきました。とても明るくハキハキ話す学生で、

笑顔もあり好印象を持ちました。ただ、彼の持ってきたエントリーシートを見てビックリ!!

学生時代力を入れて取り組んだこと(通称:学チカ)と自己PRのネタがすべて「地下アイドル」の応援活動(汗)。

最初は「これからビジネスの世界に飛び込もうとしているのに、これはないだろう」と思ったのですが、

A君の書いた文章を読み込むとこれが中々興味深い!

アイドルの全国ツアー参加のため、軽自動車を仲間と交代で運転しながら東京、名古屋、大阪、

福岡と弾丸ツアーを決行した話。推しの「生誕祭」のため、ライブ会場ロビーに出す花などの

展示を一人で取り仕切った話など。その花も徹底的にこだわり、花屋と交渉して推しのイメージや

カラーに寄せた物に作り上げたとの事。花のタワーの写真も見せてもらいました。

何より感心したのは、A君には自分がアイドルを独り占めしたいという感覚がなく、

そのアイドルをたくさんの人に知ってもらいたい、有名になってもらいたいという気持ちが強いこと。

そのアイドルのライブでは、ヲタの皆さんは新規参入の方に前の席を譲るそうです。

色々悩んだのですが、彼の行動力や企画力などを表現するにはこのエピソードが一番良いだろうと考え、

あえて彼には履歴書の書き直し依頼はしませんでした。ドルヲタ活動を強調した就活に踏み切ることにしたわけです。

普通なら訂正させたと思います。でも、A君なら面接でもドルヲタの魂をしっかり語って

内定を取るのではないかというほどのバイタリティがありました。彼の翼を奪ってはいけないとも思いました。

それでも私には正直不安はありましたね。神聖な就活の場で「ドルヲタ」とは何事か!!

と怒る採用担当者もいるのではないか・・・。もしかすると私の判断で、A君が不採用の山を築いてしまう可能性もある。

大人として社会常識を重んじるなら、もう少し厳しい指摘をした方が良かったのか・・・。

今回の件では私も判断がかなり難しかったわけです。

しかし、私の不安を他所に彼は順調に就活を進めていきました。彼の話によると、

私と同様A君のバイタリティに興味を持った採用担当者が多かったようです。

彼曰く、自分の話に採用担当者が食いついてくる感があったと。

結果として、A君はこのコロナ禍において4つも内定を獲得しました。しかもすべて上場企業。

正直、このコロナ禍による不況は当面続くと思われます。たくさんの企業が倒産し、

新卒の内定取り消しの話もちらほら出始めています。これだけ厳しい状況下でもA君はドルヲタ活動一本で成果を出した。

これは本当にすごい事だと思います。

A君が教えてくれた事。

1、ガクチカ、自己PR共に実は題材は何でもいい。

遊びであろうと趣味であろうと、真剣に取り組んでいて成果を出している物であればOKなんだ。

2、採用担当者はやはり見るところは見ている。

PRした内容はともかく、A君の人間性・行動力・コミュニケーション能力はきちんと評価されていました。

先日A君が内定報告に来てくれました。

「あっ、齊藤さんに渡したいものが・・・」と彼がバックから取り出したのが、彼が応援しているアイドルのサイン入りチェキ(汗)

彼なりのお礼のようです。ただ、これをもらって私はどうしたらよいのか(汗)

そして最後にA君が私に語った言葉

「前から思ってたんですけど、齊藤さんヲタになれる才能ありますよ!」

・・・・・

嬉しいやら嬉しくないやら(苦笑)

彼からもらったチェキ、一応私の部屋に飾ってあります。

株式会社ツクリベニッセ
取締役社長
キャリアコンサルタント(国家資格)

齊藤 貴之

2020年8月6日